さて、超清潔社会となった現代において、アレルギー疾患が増加したという話ですが、私は耳鼻咽喉科の医師をしていると、それがつくづく実感します。
学校検診をしても、20年前は副鼻腔炎が3割はいました。アレルギー性鼻炎は1割くらいでした。今ではアレルギー性鼻炎が3割います。副鼻腔炎は1割もいません。
私が小さかった頃、鼻を垂れた子供が普通でした。袖は鼻水を拭った後でカピカピになっていたし、寄生虫に罹っていた子もいました。私も虫下しを飲んでいた記憶があります。
幼少時に家畜を飼っている農家の子と都会でマンション暮らしの子ではアレルギー疾患の発症率は、明らかに後者が多いようです。また、兄弟間では第1子のほうが、第2,3子よりアレルギー疾患発症率は高いようです。
このことは、乳幼児期に様々な細菌やウイルスに感染する確率が高いほどアレルギー疾患に罹りにくいといえます。
つまり、細菌やウイルスを攻撃する細胞性免疫のほうに優位になれば、アレルギー疾患に罹りにくく、ダニや寄生虫を攻撃する体液性免疫のほうに優位になるとアレルギー疾患に罹りやすいと言われています。
生後1年以内に形成される免疫のバランスが外界からの異物によって優位の変化が生じてくるのです。
また、感染症に対する乳幼児期の抗生物質の使用もアレルギーに関わります。2歳までに上気道炎やその他の疾患に対してセフェム系抗生物質を使用していた群とペニシリン系抗生物質を使用していた群では、前者がアレルギー疾患に罹りやすいことが報告されています。
乳幼児期は腸管免疫が大きく関与するので、抗生物質による腸内細菌の変化は好ましくないわけです。
耳鼻咽喉科に通う乳幼児を観察していても、副鼻腔炎に罹患していても抗生物質は控えて、根気よく鼻水を吸引いたり、ネブライザー吸入したりしている子は小学校中学年にもなると、通院しなくなります。アレルギー疾患にも罹ってないようです。この間にしっかり免疫力を獲得していくんでしょう。
今、家畜の糞が注目を集めています。乳幼児を連れた母親が牛舎に足繁く通っているというニュースも耳にします。牛の糞を通販で売っている牧場も出現しました。家畜の糞のなかにエンドトキシンという物質があり、これに接触している乳幼児はアレルギー疾患に罹りにくいという論文がドイツのミュンヘン大学から出たのです。
昭和20年代まで日本も70%が農村で家畜と共存しておりましたが、今では家畜と触れ合う環境も失われています。現代のような細菌、寄生虫を遠ざけた超清潔生活を見直さなければならないかもしれませんね。
0 件のコメント:
コメントを投稿