2010年5月24日月曜日

感受性遺伝子診断でテーラーメイド医療

我が国の高血圧症の患者さんは約3500万人もいるそうです。放置すると、脳梗塞、心筋梗塞、腎臓障害など合併症が進行し、命にかかわる病気に間違いはありません。

基本は生活習慣によるものが多く、塩分の取りすぎやカロリーの摂りすぎによる肥満が主な原因であります。ですから、治療は、まず、塩分制限、カロリー制限を中心とした食事指導と体重減量を目的とした運動指導から始まります。降圧剤は2の次ということです。

さて、じっくり時間をかけて生活習慣を改善して、標準体重になったし、塩分も制限しているけど、まだ、高血圧があるということも実はよくあることです。つまり、生活習慣以外に高血圧の原因には遺伝的要因が複雑に関与しているということです。

ゲノム医学の進展で高血圧などの動脈硬化疾患に対する遺伝子診断が可能になってきました。つまり、遺伝子は各個人毎に一塩基多型(SNPs)のようなバリエーションがあります。動脈硬化疾患などが発症するリスクが高い遺伝子を持っているかどうかを調べることができます。

先天性疾患の発症前の遺伝子診断とは違い、病気になり易いかどうかを調べるもので、感受性遺伝子と呼ばれています。

たとえば、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の欠失型の遺伝子を持つ人は血中ACE濃度が上昇、R-A系が活性化されて高血圧が進行しやすい。(まだ、仮説の証明は不明)よって、ACE阻害剤を使用する。

また、メチレンテトラ葉酸還元酵素のT677C型遺伝子を持つ人はホモシスチンの再メチル化に支障をきたし、血中ホモシスチン濃度が上昇し高血圧が進行する。よって、葉酸の摂取を多めにする必要がある。

このように、各個人の遺伝子情報を基にテーラーメイド治療が可能になっていっています。

まだまだ、保険診療ができる状況ではないですが、真に有効な治療をするために、自分のサイズにぴったりの洋服を仕立てるような医療ができればいいですね。

2010年5月13日木曜日

ストレス解消法には、腹式呼吸と情動の涙

ストレスは色々な病気の原因となります。また、老化の促進もします。記憶を司る海馬の神経細胞にダメージを与えます。さらに免疫力を低下させ、生殖機能も低下させます。

現代社会は、溢れる情報と高度技術を要する管理化社会のなかで人間関係は疎遠になり、ストレスの多い社会であります。この社会ではストレスをなくすることは不可能です。

私自身、ストレスの指標であるコルチゾール値は19と非常に高く、下げるために試行錯誤している状態でありますが、そう簡単には下がりません。

私のかかりつけの歯科医は、私の歯を見るなり、睡眠時の歯ぎしりを指摘し、医療関係者はストレスが多いからねえと言っていました。

ストレスをなくすることはできないので、どのようにストレスを解消するか?が問題となってきます。

よく言われるのは、運動や趣味や温泉、また座禅やヨガなど瞑想すること。また、笑いはストレス解消には良いことが一般的に言われてきました。

先日、たまたま、本屋さんで、積んでいる本のタイトルに目が行きました。手に取ってパラパラと見ました。作者は有田秀穂、 東邦大学医学部教授。タイトルが脳からストレスを消す技術。面白そうなので、買ってみました。

この本はストレスの機序や解消法を医学的に証明してくれて、改めて認識を深めてくれました。

我々の脳には3種類の脳があり、学習脳と仕事脳と共感脳であります。それぞれの伝達物質はドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンです。

簡単に言うとドーパミンは快楽、ノルアドレナリンは興奮、セロトニンは前者2つを抑制して、平常心を作ります。

セロトニンが十分にあると頭がクリアになり、元気がみなぎり、心は安定しストレスや痛みに強くなります。

一方、少なくなると、逆の症状がでて、ストレスに弱くなります。

では、どうやってセロトニン神経を鍛えることができるか?

それにはリズム運動、簡単な方法として推奨しているのが、腹式呼吸です。たとえば、座禅。

さらに情動の涙。映画やドラマで涙が止めどもなく涙は、確かにすっきり感があります。脳のなかのストレスが涙で洗い流れた感じをすることがあります。

早速、やってみることにします。

2010年5月5日水曜日

元気な百寿者になるために筋肉を鍛えよう

日本の百寿者は2007年で32295名です。男性が4613人、女性が27682人で女性が男性の6倍だそうです。

この60年間で300倍に増加しました。大変めでたいことではあるのですが、欧米に比べて寝たきりが多いこと
が懸念されます。

せっかく長生きしているのですから、元気でいてほしいものです。

寝たきりは、色々な原因がありますが、多くは骨折や変形性膝関節症や入院を要する病気が基で、ベット生活を開始しだすところから始まります。1週間ベット上の生活をすると筋力は20%低下すると言われます。さらに延期すると、即座に起立、歩行することは不可能になります。

退行性疾患にならないように、生活習慣から起こる病気はできるだけ予防する必要がありますし、もし、ベット生活を余儀なくされても、ベットからできるだけ離れるような努力は必要でしょう。

約30歳を超えると筋力は徐々に加齢性の筋力低下が起こります。2年間で約1%ずつ筋力低下し、40年間で25%の筋力低下するといわれております。特に腹部と大腿前部の筋力低下は著明です。起立する時も歩く時も大変大切な筋肉ですから、この筋力低下は致命的となります。

ですから、遅くとも50歳代から運動機能の低下の少ない時から無理をしない程度に、筋肉トレーニングと有酸素運動はするべきだと思います。

無理は禁物です。せっかくの運動が怪我の原因になることは多くあることなので、十分に注意して軽めから始めることをお勧めします。

特に、女性は、閉経とともに動脈硬化や骨粗鬆症が進行しやすいです。また、変形性膝関節症も多く発症しますので、運動したくてもできないということがよくあります。無理に運動して、骨折をするとか、膝関節を悪化させたという話はよく聞きます。自分の筋力や骨密度を調べて弱点があれば早めに対処したほうがいいでしょう。

最近、ロコモティブシンドロームという言葉をよく耳にするようになりました。運動器障害のために要介護となる危険性の高い状態のことを言いますが、高齢とともに、低栄養や筋肉萎縮が進行しているわけです。

中年者はメタボリックシンドロームが大敵ですが、高齢者になると、ロコモティブシンドロームに気を付けなければなりません。つまり、栄養過多より、消化管の吸収力低下などもあり、低栄養になりやすいのでタンパク質をしっかり獲る必要があります。

それと筋肉トレーニングと有酸素運動で筋力強化。

先程、軽めからのスタートをお勧めしましたが、実際に筋力を維持するには最大筋力の20%~30%の強度のトレーニングをしないと無理です。筋力増加のためには最大筋力の30%以上の強度が必要です。

ウォーキングでしたら、普通歩行では効果はありません。速歩で腕を振るくらいのスピードでないと効果はでないことが証明されております。でも、継続していくと、そのようなレベルに到達すると思います。継続は力です。コツコツと続けてください。