前回に引き続き、先日のセミナーでメタボリックシンドローム(MS)とアンチエイジングというタイトルで慶応大学医学部老年内科の新村健先生が講演されました。MSもかなり世間に馴染んできた言葉ですが、まだまだ奥の深い症候群であることが、新村先生のお話で改めて実感いたしました。
まずMSの診断基準(2005年)ですが、ウェスト周囲径 男性85cm以上、女性90cm以上
これに加えて以下のうち2項目以上を満たす
①トリグリセライド150mg/dlかつ・またはHDL-コレステロール値40mg/dl未満
②収縮期血圧130mmHg以上かつ・または拡張期血圧85mmHg以上
③空腹時血糖値110mg/dl
この基準からすると日本人の男性の30%が当てはまり、予備軍も含めると50%以上にもなり、これはかなり厳しい基準であると世間では批判がありましたが、詳しく医学的根拠を聞くと納得させられます。
メタボリックシンドロームという名前が定着するまでには、20年近くの歳月がかかっております。1986年にMultiple risk factor syndromeという名前で登場しました。その後、1988年Syndrome X、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、さらに1999年にMatsuzawa Yが内臓脂肪症候群の名前で発表しました。これが、MSの概念の基礎となっていると思います。つまり、内臓脂肪型肥満がすべての元凶で、次々と同一人物に個々の疾患が重複するというものです。
その後、脂肪細胞から善玉アディポネクチンが分泌されることや肥大化した脂肪細胞からは炎症促進タンパクであるアディポサイトカインや血圧に関係するアンジオテンシノーゲンが分泌することがわかり、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化とのメカニズムが明確になってきました。
一方、アンチエイジング医学の目玉というべきCRという概念があります。カロリー制限(Caloric restriction)ですが、このCRはまったくMSとはすべてにおいて真逆であります。MSとCRは脂肪細胞の機能を基軸に証明された発症機序はまったく逆方向のベクトルなわけです。すなわち、MSは老化促進モデルであり、CRは老化抑制モデルということが言えます。
なんと簡潔明瞭な位置づけでしょう。目から鱗が剥がれた感のあるものでした。進化する医学に感心いたしました。
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