2010年9月24日金曜日

第10回抗加齢医学の実際を聴講してきました

9月19,20日の連休を利用して東京、大手町で「第10回抗加齢医学の実際」のセミナーを聴講してきました。

抗加齢医学の最前線の内容盛り沢山の大変有意義なセミナーでした。2日間で14時間の休憩時間も惜しんでの長丁場のセミナーでしたが、各先生の講義は、名調子で飽きることもなく、興味が尽きないものばかりでした。

吉川敏一先生(京都府立医科大学)、坪田一男先生(慶応大学)はじめ、素晴らしい企画を誠にありがとうございます。

今回参加を決意したのはプロスキーヤーの三浦雄一郎さんが特別講演をされるということが挙げられます。

世界の最高峰を7つも制覇し、しかも75歳でエベレスト登頂に成功された、いわば抗加齢医学会を代表するスーパースターであります。

実は三浦雄一郎さんは弘前高等学校出身で私の母校の先輩であり、雲の上の憧れの人ではありますが、親近感もありました。

雄一郎さんは、現在165cm、80kgだそうで、アスリートの割には失礼ながら太っているのかなと思いました。毎日の食事もその年齢にしては大変旺盛で焼き肉も500gくらいは食べるのだそうです。

しかし、2年後さらにエベレスト登頂予定があるようで、その時に向けて体重を絞り込み、身体作りは半端じゃないくらいのトレーニングだそうです。両足に20kgの重し、背中には30kgだったかのリュックサックを背負ってウオーキングするのだそうです。

これまでの冒険で数か所も骨折をしているようですし、意外にも、不整脈とか肥満による生活習慣病の持病も色々あるようです。

これらを強靭な意志と幸運で乗り切ってきたということ、これが、なによりも素晴らしいことです。諦めることなく倒れてもまた起き上がる、この精神こそ見習いたいものです。

2010年9月17日金曜日

アンチエイジングドックの勧め(入門編4)

若返りをしたいなら、まず今の自分の身体の老化度を客観的に測定することが先決です。

病的老化や老化危険因子は生活習慣のなかに原因があります。ですから、正しい健康に関する知識を持ち、正しい生活習慣に改善していく必要があります。

具体的に、骨、血管、筋肉、神経、ホルモンの5種類の各パーツ毎の臓器年齢を測定します。

また、老化危険因子判定として免疫機能、代謝機能、抗酸化能、ストレス抵抗性、生活習慣の5種も測定します。

検査は約40分要します。

また、オプションとして不足ミネラルや有害ミネラルを毛髪から測定することもできます。

これらの結果の説明とアドバイスは後日、約1時間、アンチエイジング指導医が、各自のライフスタイルに合わせて、具体的に食事療法と運動療法とストレスケアを中心にアドバイスします。

実際、患者さんに、これまでの生活習慣を変えてもらうことはかなりの抵抗を受けます。

仕事が忙しい人は、帰宅後にスポーツジムに行って運動することはほとんど不可能です。このような方は仕事中の移動時間にできる階段を使った筋肉トレーニングを提案します。

膝に故障を持っている人には、椅子を使って、膝に負担の少ないハーフスクワットを提案します。

食事が炭水化物に偏っている方は、インスリンの分泌がジェットコースターのようにアップダウンするので、食欲コントロール不能状態であり、炭水化物中毒から抜け出すことは至難の業でもあります。

まずは、ちょっとだけを続けてもらう。これによって得られた成果を体感してもらう。これで本人が健康になったという体感を得られれば次からは率先して行動を継続してくれるはずです。

アンチエイジングドックの目的は、健康管理のきっかけ作りのお手伝いをさせていただくことだと思っております。

そして、継続して頂くためのモチベーションを向上させることだと認識しております。

アンチエイジングドックのデータは正確に体内年齢を反映してますから、頑張った成果が素直にデータに出てきます。これがやる気を持続させる決め手になります。

まずは、患者さんの治したいところに焦点を当て、そこを糸口にする。そして患者さんの視点に立って患者さんの心に響く説明をさせていただくよう努めております。

長寿遺伝子をオンにする方法②運動(入門編3)

長寿遺伝子のスイッチをオンにする方法の2つ目は運動をすることです。

運動をするとエネルギーの見張り番であるAMPキナーゼが活性化して長寿遺伝子のスイッチをオンにします。

私たちの先祖は1万年前サバンナを毎日20kmから40km移動して獲物を獲って生きていたわけです。サバンナを生き抜いてきた遺伝子が現代の我々の身体の中に脈々と受け継がれていたのです。

しかし、現代人はファーストフードやコンビニ食といった便利で安価なエサで飼いならされた家畜のような生活で、筋肉を動かせば回転するはずの代謝が不完全燃焼を起こしている状態であります。

運動をすると細胞内ではどんなことが起きるかと言うと、細胞内のエネルギー製造工場であるミトコンドリアが増えて効率のよい馬力の強いエンジンを持った細胞が増えます。しかも燃費のいいエコノミーで良質なミトコンドリアが増える為に排気ガスも軽減するのです。

排気ガスが減れば、有害な活性酸素も減ります。さらに、抗酸化酵素を生産する活性酸素防御機構も活発に働き、活性酸素を消してくれるわけです。活性酸素が減れば老化は予防できるということです。

それだけではなく、運動すると沢山の特典があります。脳から癒しのホルモンであるセロトニンが分泌します。それによってストレスに強くなります。

脂肪細胞からは善玉ホルモンのアディポネクチンが増えて、代謝を良くし、動脈硬化を抑えます、若返り作用があります。

さらに脳からは成長ホルモンがでて、免疫力が強化されます。

運動はアンチエイジング指導医がお薦めする最強のサプリメントだといえます。しかもタダですから尚更よいですね。

2010年9月16日木曜日

長寿遺伝子をオンにする方法①カロリー制限(入門編2)

カロリー制限をすれば長寿遺伝子のスイッチがオンになり、元気に長寿を享受できることがこれまでの実験でわかってきました。

特に糖質、つまり炭水化物を制限するとそれが著明に表れてきます。糖質を摂ると、血糖が上がり、すい臓からインスリンがでます。インスリンの働きで、糖質は細胞内に取り込まれエネルギーを作ります。

同時に有害な排気ガスである活性酸素も排出します。また、インスリンの働きで活性酸素防御機構もストップしてさらに活性酸素が増加します。これが自らの細胞のDNAを攻撃し、ガンや生活習慣病や老化の原因になるといわれています。

ですから、糖質やインスリンは勿論、なければ生きてはいけませんが、若返りにとっては敵なのです。

それでは、どのような食事を摂れば若返りにはよいかと言えば、インスリンをあまり出さない食事をすればよいということです。低インスリンダイエットとか低炭水化物ダイエットともいわれます。

インスリンは糖に反応して分泌しますから糖質の割合の少ない食材から食べることがよいようです。

つまり、野菜、魚、大豆などです。炭水化物類でも玄米、全粒粉のほうが精白米や精白小麦より糖質の割合が少ないです。

お酒で言えば、焼酎やウイスキーのほうが、ビールや日本酒より糖質が少ないです。

私も低炭水化物食に変えてから体重が18kg減りましたが、外部からの糖質からではなく自分のため込んだ脂肪を分解して糖質に変えてエネルギー源にしています。このほうが、エネルギーの燃焼がよく、無理なく痩せることができます。

カロリー制限が若返りモデルであるのに対し、メタボリック症候群は真逆の老化モデルです。

メタボリック症候群は内臓脂肪型肥満から発症するものですが、この内臓脂肪細胞から沢山の悪玉ホルモンが産生されていたことが分かってきました。これがメタボリックドミノと言われる高血圧、脂質異常、糖尿病、脳梗塞、ガン、さらには認知症、透析、失明に進行するわけです。

カロリー制限して、インスリンを節約した食事方法に変えれば、若かった頃の体型に戻り、長寿遺伝子のスイッチをオンにすることができます。

アンチエイジング医学とは(入門編1)

アンチエイジング医学とは何ですか、一言で答えなさいと問われれば、老化予防の医学、さらに突き詰めれば若返りの医学だといえます。

美容的なところで言えば、顔のしみ、しわ、たるみですが、これは皮膚の老化です。なにが主な原因かと言えば紫外線です。皆さんは日傘をさしたり、日焼け止めクリームを塗ったりUVケアをしますよね。

これと同様に、外見だけではなく身体の内部の各臓器、骨、筋肉、血管、神経、内臓ホルモンに対してもそれぞれ老化予防を実践してますかということなのです。

各臓器の老化予防、さらには若返りに関する医学的知識を理解してもらい、実践してもらうことが、アンチエイジング医学の目的です。

皮膚の老化の主な原因は紫外線と言いましたが、内部の臓器の老化の原因のひとつに悪玉酸素といわれる活性酸素があります。

活性酸素は、外界のものでは、タバコ、放射線、紫外線、大気汚染に含まれておりますが、体内からも発生します。

私たちの細胞の中にはミトコンドリアという、酸素を吸ってブドウ糖からエネルギーを作る製造工場がありますが、そこからの有害な排気ガスが活性酸素です。

これが自らの細胞を攻撃し、ガンや生活習慣病の原因をつくり、老化を進行させます。

この活性酸素という言葉は、アンチエイジング医学ではよく登場します。キーワードのひとつです。

さて、皆さんは、UVケアのように熱心に、体内臓器の健康管理は、日頃から気を配っておられますか?でも正しい健康管理方法がわからないと言う方も多いのではないでしょうか?

今から10年前にアメリカのウィスコンシン大学で20年間にわたって普通のエサを与えられたサルと30%カロリー制限したエサを与えられたサルの老化を比較した論文が発表されました。

普通のエサのサルは目に力がなく、白髪で毛並みも艶がなく、背中が曲がった老人ですが、カロリー制限したサルは、毛並みも良く、眼力も鋭く、歩く姿も勇ましい青年のようです。写真を見るとこの違いに皆さんびっくりします。

この論文以来、カロリー制限という言葉もアンチエイジング医学のキーワードの一つとなっております。

実は同じ年にもう一つの論文が発表されました。レオナルド・ギャランティー博士の酵母菌の長寿遺伝子の発見です。

カロリー制限すると長寿遺伝子のスイッチがオンになり、寿命が延びるという内容でした。奇しくもカロリー制限という言葉がここでも登場しました。

この長寿遺伝子とは、細胞の設計図といわれるDNAに傷が付かないように保護するシートの役割をする遺伝子です。

このような長寿遺伝子はすべての人間誰でも保有している遺伝子なのですが、スイッチがオンになっている人とオフになっている人がいるというのです。

アンチエイジング医学は長寿遺伝子のスイッチをオンにする方法を研究、実践する医学であり、元気で長寿を享受することを目指す実践的科学であります。

あなたも長寿遺伝子のスイッチをオンにしてみませんか?

2010年9月8日水曜日

86歳のおばあちゃんのアンチエイジングの挑戦

先日、86歳の御婦人のアンチエイジングドックをいたしました。結果は実年齢より高齢に判定され、残念な結果となりました。後日、結果説明とアドバイスをいたしました。

まず、これまでに運動の習慣はありますか?とお聞きしたところ、長い間、ヨガと1時間の散歩を毎日欠かさずされていたということでした。

ただ、5年前に腰椎椎間板ヘルニアの手術をしてそれ以来、運動はしなくなったということでした。この5年間の運動不足が悪い結果にでたのだなと思いました。

このおばあちゃん、お話をしていても86歳には到底思えないほど反応がよく、耳も達者で頭脳は明晰でした。

まず、これまでの食事習慣についてお聞きしましたが、、長寿のための理想的な食事をされておりました。魚は週5回は食べておられますし、リンゴは半分毎日食べておりました。また、よく噛んで食べておりました。

しかし、残念ながら糖尿病予備軍の検査データがありましたので、インスリンを上げない食べ方についてアドバイスをいたしました。たとえば、ご飯はお茶碗半分で一番最後に箸をつける、糖質は1食40g以内に抑えるとか、高齢になるとタンパク質が減少するので大豆食品を増やすように、、、とか。

次に、運動療法の説明をしましたが、以前運動習慣がありますので、左程伝授するのに困りませんでした。ただ、腰痛の持病がありますので無理はできません。椅子を使った腕立てやスクワットや腹筋などの高齢者用の軽いメニューの筋肉トレーニングを実践しながら説明いたしました。おばあちゃんも真似て実践してくれました。その動作の軽やかなこと、驚いてしまいました。手応えが十分ありました。

まず、習慣化するために、散歩する時間を決めてもらいました。朝は5時起床だということで本人の都合で6時から15分することに決めました。腰痛がありますのでまずはゆっくり無理をせずが原則です。これから涼しくなりますから気持ちよく散歩できるでしょう。

次に、筋肉トレーニングをする時間を検討しました。朝食を7時から取りますから後片づけが終わって8時から10分だけすることに決めました。夕方も5分だけ筋肉トレーニングしてもらうことにしました。夕食後1時間後です。

まずは、運動をする習慣をつけてもらうことが肝心です。そのためには毎日同じ時間帯に短時間だけ苦しくない程度の軽いメニューからすることが秘訣です。

ご本人もやる気になっていただきましたので、次回3ヶ月後に運動や食事療法が順調にいっているか確認して、順調ならご本人の体力に応じてレベルアップする予定です。

まずは、今の健康状態を客観的に把握していただき、正しい運動、正しい食生活を知っていただき、習慣化してもらう。3ヶ月後に、その成果をご自身で感じてもらい、本人のやる気を後ろ盾することが、次回のアドバイスの目的になります。6ヶ月後には再度、アンチエイジングドックをして、さまざまな検査を数値化して比較検討します。

恐らく、このおばあちゃんは6ヶ月後には、5歳は簡単に若返っていると思います。今から楽しみです。

2010年9月2日木曜日

ドクター江部の「やせる食べ方」=糖質制限食の効果

2010年4月第1刷発行の 京都の名医がおしえる「やせる食べ方」 江部康二著を買って読みました。以前からブログ「ドクター江部の糖尿病徒然日記」は拝見しておりましたが、糖質制限食の内容を知りたくて読みました。私も4年前から糖質制限食を自己流でやってきて、その効果のほどは実証済みであります。

ドクター江部の1回の食事の糖質の総量は20g以内ということです。精白米ご飯で勘算すると56gに相当します。茶碗普通盛りで150gですので、約3分の1です。糖質は米やパン、麺類などの小麦粉などの主食以外にもイモ類やカボチャなどの根野菜にも多く含まれます。また果物や調味料、ビールなどの醗酵酒にも多く含まれますので、ドクター江部の糖類20g以内という目安はかなり厳しい感じがします。

私の場合、それに比べるとまだ穏やかな制限です。唯一決めているのは、昼食はソイジョイ2本。朝と夜のご飯はできるだけ五穀米にして90gということです。五穀米90gは糖質31gに相当します。それ以外は野菜、魚が中心の主菜と果物です。ビール350ml(糖質10.9g)は欠かさず飲みます。その後焼酎100ml(糖質0g)を飲みますので、夜食だけで糖質は50gは超えていると思います。

それでも、今までの食事から比べればかなり糖質は制限しております。体重も15kgが徐々に減り健康体になりましたから糖質制限はカロリー制限や脂質制限より明らかに減量には効果があると思います。理想的体重になってからも同様の食事をするとさらに体重が落ちますから逆に体重を維持することに気をつけなければなりません。

さて、そのメカニズムですが、糖質は摂取すると消化器粘膜から吸収されて血糖が上昇します。するとインスリンがすい臓から分泌し、ブドウ糖は筋肉や脳に取り込まれます。ブドウ糖はエネルギー源として使われます。また余分なブドウ糖は肝臓で脂肪として貯蔵されます。

一方、糖質制限をすると、身体を動かすエネルギー源は摂取されたブドウ糖が少ないので肝臓で脂肪酸を分解してできたブドウ糖を使います。これは糖新生と言いますがその製造には余分のエネルギーを消費します。つまり、脂肪は分解してくれるし糖新生で運動をしなくてもエネルギーは勝手に消費してくれるし、余分な脂肪は確実に減る仕組みなのです。

しかも糖質制限するとインスリンの分泌も少なく節約できるので糖尿病にもかかりにくいし、インスリン量が安定しているので食欲をコントロールしやすいし精神的に安定します。さらに細胞の酸化を抑えますので老化を食い止めます。

現代の人間の食生活をみると明らかに糖質に頼っているところがあります。スーパーマーケットに行っても恐ろしいほどに糖質の山です。野生のトラがスーパーマーケットに紛れ込んで陳列棚の食品を食い漁ったら間違いなくそのトラはメタボになり病気になることでしょう。

脳のエネルギー源は唯一、ブドウ糖だけという迷信に囚われ、糖質から抜け出せない方、すでに糖質中毒になっているかもしれません。