2010年4月22日木曜日

アンチエイジング商品は慎重吟味を

ネットを見ていると、若返る、元気になる、美肌になる、シワが消える、、、。魅惑的な言葉が溢れています。サプリメント、化粧品、健康グッズは、恐ろしいほど溢れ返っております。

著名人、有名人などの推薦となると、つい信用したくもなります。実際に健康商品は、長期間使用してみないと、効能は実感することは難しいということもあり、半信半疑で買って使用している人も沢山おられるだろうと思います。

我々アンチエイジング医学に携わる人間としては、科学的な根拠に基づいたものでない限り、無責任に推奨することは極に慎まなければならないと思っております。

今の日本の医学部で教えている西洋医学でさえ、医学の進歩とともに事実が覆されることも過去には多々あったわけです。統合医療、漢方医学、アーユルヴェーダ医学など世界には沢山の医学体系があります。長い伝統を持つ先人の知恵が濃縮された医学には、真実は存在すると思いますが、現在の医学では理解できないことも多々あります。

すべてを真摯な目で検証することは、医学を学ぶ人間としては必要だろうと思います。

私が今、検証しているものがいくつかあります。果たしてそれは、有効なのか、無効なのか、はたまた有害なのか?不明ではあるが、魅惑的なサプリメントかなと思っています。
①水素水  ②サンゴカルシウム  ③ゲロバイタル  ④DHEA  ⑤メラトニン

DHEAとメラトニンは抗加齢医学会でも推奨しているので、信憑性はありますが、それとて、長期の使用による効能の文献はまだないので、未知なところもあります。

ゲロバイタルとはプロカインという麻酔薬ですが、若返りの薬としてルーマニアのアナ・アスラン博士が開発されたものです。まだ使用したことがないので、ノーコメントです。

サンゴカルシウム、これはエビデンスがあるのだろうか?調べた限りでは、納得する文献には出会っておりません。

水素水、これは抗加齢医学会でもディベートされてことがありますが、エビデンスは確立されているものですが、市販されているものにはかなり、偽りのものが横行しているようなので注意が必要だろうと思います。

とにかく、今、アンチエイジング商品は、混乱の極致だろうと思います。偽物、悪い品質、管理不良など、さまざまな問題を抱えていることは確かです。第3者の評価機構の審査が必ず必要だと思います。

確かなのは、新鮮な野菜、果物の摂取とカロリーオーバーにならないことと適度の運動とストレスケアと生きがいを持つこと。

サプリメントは、エビデンスのあるものを自らが吟味し、自己責任のもとに慎重に摂取することをお勧めします。

2010年4月14日水曜日

「ドクター由美の脳力育成HACKS!」面白い本でした

早速、川田浩志先生の「ドクター由美の脳力育成HACKS」を読みました。ストーリー形式になっていて、今までのHACKS本とは違い、読んだ後の爽快感が大変良いです。

それこそ、川田先生が最後に書かれている幸福度100%になること間違いない本です。

脳に関する科学的根拠(エビデンス)だけのネタで構成されているところに価値があります。個人的見解は極力回避して、非常に客観的で説得力がでてきます。

さらにこれらの文献をつなぎ合わせて、ストーリー性を持たせ、読者に飽きさせない、休まず先を読みたくなるワクワク感があります。

これは爆発的に売れる予感が致します。ストーリーの内容を詳しく書くことは控えます。目次を列記します。目次だけだとなんら面白みは見えてきませんが、本編を読むときのお楽しみししてください。

1、プロローグ 脳は育てるもの
2、スタートライン 脳を知る
    遺伝は頭のデキを左右するのか?
    あなたが自分の脳力を向上できる科学的根拠
3、ホップ 脳を育てる準備をする
    脳に良い肥料を与える
    脳の環境を整える
    脳を上手に寝かせる
4、ステップ 脳を育てる
    ソンな思考を軌道修正する
    勉強脳を育てる
    サビない脳にする
5、ジャンプ 脳を活かす
    ストレスに勝つ
    仕事を征する
    幸せになる
6、エピローグ

2010年4月9日金曜日

サクセスフルエイジングの熱血男、川田浩志先生

4月4日、東京で日本抗加齢医学会主催のセミナーが行われましたが、今回も第4弾として著名な講師先生の講義を振り返ってみます。

今回は、アンチエイジング医学会でも特に有名な熱中男、東海大学抗加齢ドック准教授の川田浩志先生。オタク的雰囲気も若干醸し出していますが、自らの身体をアンチエイジングサイボーグ化し、動く抗加齢医学会の広告塔です。

さて、私も川田先生の著書を気づけば3冊持っており、新作の「ドクター由美の脳力育成HACKS!」をアマゾンで注文したばっかりです。また川田先生のブログをいつもチェックして新しい情報をゲットしております。自分もしっかりオタク化してました。

川田先生もアンチエイジングドック医として患者さんへのアドバイスに携わっておられますので、患者さんの生活習慣を変えてもらうことの難しさは、身に沁みて感じていることでしょう。しかし、川田先生の強みは何と言っても、身体から発散する情熱ではないでしょうか。それが患者さんの心を揺り動かすのではないでしょうか。

私が一番、感銘を受けたのは、川田先生自らのミトコンドリアDNAのハブログループの遺伝子診断。これはなかなインパクトがあります。つまり、人類がアフリカ大陸で発生してどこへ辿って日本人として今いるかを遺伝的に判断するというものです。

大変興味があります。自分の骨格からしてヨーロッパ系では決してないでしょうが、アジア系でもどの分類なのか?東アジアなのか中央アジアなのか南アジアなのか?自分のルーツを知ることは楽しみであります。しかし、これを知ることによってそれ以上の情報が得られるのかな?勉強不足なのでわかりませんが、たぶん何かがわかるのでしょうね。

また、肥満の遺伝子も調べていました。肥満、高血圧、メタボ、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞の発症リスクをオッズ比で判定してくれます。これは、悪い結果が出ると、やはり落ち込みそうですがこの悪い遺伝子が発現しないような生活をするように気を付けるという気持ちが強く湧いてきそうなので、モチベーションを上げるにはいい検査だろうと思います。

もうひとつ、為になったことは、ホルミシス効果という言葉。本来は生体にとって有害なものが、ある程度の量だと、かえって体に良い作用を発揮する現象。つまり、わかりやすい例でいうと、お酒。多少の量のお酒は百薬の長ということ。これと同様に運動に関しても、適度の運動は良いが過度の運動は逆効果。さらに抗酸化物質、つまり、ビタミンCやビタミンEなどですが、これも気を付けないと毒になりえるということです。この辺のバランス。これが実は非常に大切です。つい、熱中すると陥りやすい逆ホルミスト効果。

川田先生は、このホルミスト効果を自分を戒めるように講義をされていたのが印象的でした。

私も今までに、健康に良かれと思っていた行為が、過剰になりすぎて有害になっていたことが多々あります。アンチエイジング指導医は特に気を付けなければなりません。

2010年4月8日木曜日

メタボリックシンドロームVS カロリー制限

前回に引き続き、先日のセミナーでメタボリックシンドローム(MS)とアンチエイジングというタイトルで慶応大学医学部老年内科の新村健先生が講演されました。MSもかなり世間に馴染んできた言葉ですが、まだまだ奥の深い症候群であることが、新村先生のお話で改めて実感いたしました。

まずMSの診断基準(2005年)ですが、ウェスト周囲径 男性85cm以上、女性90cm以上
これに加えて以下のうち2項目以上を満たす
①トリグリセライド150mg/dlかつ・またはHDL-コレステロール値40mg/dl未満
②収縮期血圧130mmHg以上かつ・または拡張期血圧85mmHg以上
③空腹時血糖値110mg/dl

この基準からすると日本人の男性の30%が当てはまり、予備軍も含めると50%以上にもなり、これはかなり厳しい基準であると世間では批判がありましたが、詳しく医学的根拠を聞くと納得させられます。

メタボリックシンドロームという名前が定着するまでには、20年近くの歳月がかかっております。1986年にMultiple risk factor syndromeという名前で登場しました。その後、1988年Syndrome X、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、さらに1999年にMatsuzawa Yが内臓脂肪症候群の名前で発表しました。これが、MSの概念の基礎となっていると思います。つまり、内臓脂肪型肥満がすべての元凶で、次々と同一人物に個々の疾患が重複するというものです。

その後、脂肪細胞から善玉アディポネクチンが分泌されることや肥大化した脂肪細胞からは炎症促進タンパクであるアディポサイトカインや血圧に関係するアンジオテンシノーゲンが分泌することがわかり、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化とのメカニズムが明確になってきました。

一方、アンチエイジング医学の目玉というべきCRという概念があります。カロリー制限(Caloric restriction)ですが、このCRはまったくMSとはすべてにおいて真逆であります。MSとCRは脂肪細胞の機能を基軸に証明された発症機序はまったく逆方向のベクトルなわけです。すなわち、MSは老化促進モデルであり、CRは老化抑制モデルということが言えます。

なんと簡潔明瞭な位置づけでしょう。目から鱗が剥がれた感のあるものでした。進化する医学に感心いたしました。

2010年4月7日水曜日

アンチエイジングドックの主目的はモチベーションの向上

今回は、先日のアンチエイジングセミナーの聖蹟サピアタワークリニックのアンチエイジング外来をされておられる渡邉美和子医師の講義を拝聴して、感銘を受けたのでご報告します。

渡邉先生は、大変穏やかな雰囲気をお持ちの才女です。しかも美人です。アンチエイジングドックを担当し患者さんに対しても大変懇切丁寧に説明されるのだろうなと容易に推測されます。

アンチエイジングドックは、患者さんの病的な老化や老化危険因子を早期発見、生活習慣や食事の見直し、運動の推進、ストレスケアを指導することが目的です。

しかし、生活習慣改善や健康に対する誤った認識を是正させることは、意外に難しいことでもあります。

患者さんのライフスタイルを根底から変えさせるのは、患者さんの抵抗感も強く、素直に受け付けてくれません。患者さんの個人個人のライフスタイルに合わせてオーダーメードの提案が必要なんです。

基本的に患者さんの立場に立ってアドバイスを差し上げられればいいわけです。

患者さんの生活習慣に馴染んだ行動を提示し、まず、ちょっとだけを続けてもらう。これによって得られた成果を体感してもらう。本人が健康になったという体感を得られれば、それからは率先して行動を継続、強化してくれるというわけです。つまり、最初のきっかけを作ってあげることが目的だと言われました。成程と思いました。

渡邉先生も最初は大変試行錯誤されながらコツを習得されたのではないでしょうか。渡邉先生の書かれたテキストの一字一句が珠玉の言葉として私の心にも響いてきます。

渡邉先生は、アンチエイジングドックの主目的はモチベーションの向上だと明言しております。私もこれには賛同です。

今回、私は渡邉先生から大変貴重なヒントを得ました。
①まず、説明の仕方を違った視点からアプローチする。
②患者さんの治したいところに焦点を当てて、そこを糸口にするということ。
③患者さんの視点に立って患者さんの心に響く説明をする。
④患者さんのライフスタイルに合った行動のきっかけ作りをしてあげる。

このヒントを基に自分なりに説明の仕方を構築し、明日からの診療に役立てたいと思います。

2010年4月6日火曜日

女性ホルモン補充療法は長寿社会の生きる道

先日、4月4日、アンチエイジング医学学会主催のセミナーに行ってきました。行くたびに新たな発見があり、実り多い収穫を得ることができました。

6人の講師陣それぞれ感銘を受けましたが、今日の話題は、女性ホルモン補充療法について取り上げます。東京歯科大学市川総合病院の産婦人科医、高松潔先生の講義から拝聴したことをまとめたいと思います。

まず、今の日本の女性の平均寿命は86.05歳です。閉経年齢は平均50.54歳ですから、閉経後の約35年間は女性ホルモンの分泌が低下した状態で暮さなければいけないことになります。

むしろ同年齢の男性のほうが女性ホルモンであるエストロゲン量が多いくらいです。男女ともヒトとして生きて行くうえで、沢山の臓器がエストロゲンを必要としています。

ですから、エストロゲンが欠乏すると色々な症状が出現します。たとえば自律神経失調症状、精神神経症状、泌尿生殖器の委縮症状、脂質異常症、心血管系疾患、骨量減少症、骨粗しょう症などです。

前者が、いわゆる更年期障害症状ですが、特に、疲れやすい、肩こりがある、不安感などが多いようです。また、背景として機能障害以外に家族、仕事、コミュニティーの中で抱える悩みや女性性の喪失感、将来の不安があり、複雑に絡み合っています。

つまり、更年期障害とは自分の身体に自らが容易にほぐすことのできない糸でグルグルに巻きつけられた状態だというわけです。

後者の症状、つまり脂質異常症と骨粗しょう症。これこそ60歳を超えてから深刻に考えなければいけない現象です。

骨折、心筋梗塞、脳梗塞、そして認知症、挙句に寝たきり、悲しい老後ではありませんか。日本も50年前の平均寿命は70歳に届かなかったわけで、更年期障害についての十分な知識もなく、また期間も短かったわけで、社会的現象としての認識もなかったものと思われます。しかし、これからの将来は平均寿命は延長していき、女性の人生の半分を占める長い期間になるわけですから、真剣に検討しなければいけない時代になってます。

2009年、ランセットに一つの論文が発表されました。日本の2007年生まれの子の平均余命は107歳だそうです。現代よりさらに21年長生きするということです。

つまり、時代の流れは、長寿を許容せざるをえません。健康で長寿はすべての人の願いです。ならば、不足したホルモンは補って健康に長生きする道を選ぶしかないでしょう。

日本人は確かにホルモンという言葉に敏感です。危険な匂いを察知しています。確かに無知な医師が処方することは危険極まりないことです。また、乳がんのリスク、血栓症のリスクもあり、十分、投与前に説明をすることは必要です。

2001年WHIでショッキングな記事を出しました。米国での1.6万人の臨床試験で、女性ホルモン補充療法(HRT)群に乳がん(HRT群 38人 VS プラセボ群 30人 = 1万人当たり)が発病したというものです。また、心臓発作、脳卒中のリスクもプラセボ群よりわずかに多く発生しています。一方、大腸がんと大腿骨頚部骨折はHRT群が減少しているという結果でした。

乳がんの発病は確かにHRTの期間の累積に比例してリスクが増すことは事実ですから、投与期間については慎重であるべきでしょう。一方、HRT施行期間が長期になるに従って死亡リスクは未施行群より下がるという文献もあります。つまり、未施行群は乳がんや心筋梗塞や脳梗塞以外の病気でHRT施行群より早く死亡しているということです。

女性ホルモン補充療法は、今後、これらの問題を解決しながら進化していくことは間違いないでしょう。日本産婦人科学会も推進する方向のようで、頼もしい限りです。

将来も閉経年齢はそんなに変わらないと思うけど、寿命は延びて行っているわけですから、閉経後50年以上も女性ホルモンが欠乏した状態で女性が衰えモードで人生の半分を生きることはもったいないことだと思いませんか?