2010年4月6日火曜日

女性ホルモン補充療法は長寿社会の生きる道

先日、4月4日、アンチエイジング医学学会主催のセミナーに行ってきました。行くたびに新たな発見があり、実り多い収穫を得ることができました。

6人の講師陣それぞれ感銘を受けましたが、今日の話題は、女性ホルモン補充療法について取り上げます。東京歯科大学市川総合病院の産婦人科医、高松潔先生の講義から拝聴したことをまとめたいと思います。

まず、今の日本の女性の平均寿命は86.05歳です。閉経年齢は平均50.54歳ですから、閉経後の約35年間は女性ホルモンの分泌が低下した状態で暮さなければいけないことになります。

むしろ同年齢の男性のほうが女性ホルモンであるエストロゲン量が多いくらいです。男女ともヒトとして生きて行くうえで、沢山の臓器がエストロゲンを必要としています。

ですから、エストロゲンが欠乏すると色々な症状が出現します。たとえば自律神経失調症状、精神神経症状、泌尿生殖器の委縮症状、脂質異常症、心血管系疾患、骨量減少症、骨粗しょう症などです。

前者が、いわゆる更年期障害症状ですが、特に、疲れやすい、肩こりがある、不安感などが多いようです。また、背景として機能障害以外に家族、仕事、コミュニティーの中で抱える悩みや女性性の喪失感、将来の不安があり、複雑に絡み合っています。

つまり、更年期障害とは自分の身体に自らが容易にほぐすことのできない糸でグルグルに巻きつけられた状態だというわけです。

後者の症状、つまり脂質異常症と骨粗しょう症。これこそ60歳を超えてから深刻に考えなければいけない現象です。

骨折、心筋梗塞、脳梗塞、そして認知症、挙句に寝たきり、悲しい老後ではありませんか。日本も50年前の平均寿命は70歳に届かなかったわけで、更年期障害についての十分な知識もなく、また期間も短かったわけで、社会的現象としての認識もなかったものと思われます。しかし、これからの将来は平均寿命は延長していき、女性の人生の半分を占める長い期間になるわけですから、真剣に検討しなければいけない時代になってます。

2009年、ランセットに一つの論文が発表されました。日本の2007年生まれの子の平均余命は107歳だそうです。現代よりさらに21年長生きするということです。

つまり、時代の流れは、長寿を許容せざるをえません。健康で長寿はすべての人の願いです。ならば、不足したホルモンは補って健康に長生きする道を選ぶしかないでしょう。

日本人は確かにホルモンという言葉に敏感です。危険な匂いを察知しています。確かに無知な医師が処方することは危険極まりないことです。また、乳がんのリスク、血栓症のリスクもあり、十分、投与前に説明をすることは必要です。

2001年WHIでショッキングな記事を出しました。米国での1.6万人の臨床試験で、女性ホルモン補充療法(HRT)群に乳がん(HRT群 38人 VS プラセボ群 30人 = 1万人当たり)が発病したというものです。また、心臓発作、脳卒中のリスクもプラセボ群よりわずかに多く発生しています。一方、大腸がんと大腿骨頚部骨折はHRT群が減少しているという結果でした。

乳がんの発病は確かにHRTの期間の累積に比例してリスクが増すことは事実ですから、投与期間については慎重であるべきでしょう。一方、HRT施行期間が長期になるに従って死亡リスクは未施行群より下がるという文献もあります。つまり、未施行群は乳がんや心筋梗塞や脳梗塞以外の病気でHRT施行群より早く死亡しているということです。

女性ホルモン補充療法は、今後、これらの問題を解決しながら進化していくことは間違いないでしょう。日本産婦人科学会も推進する方向のようで、頼もしい限りです。

将来も閉経年齢はそんなに変わらないと思うけど、寿命は延びて行っているわけですから、閉経後50年以上も女性ホルモンが欠乏した状態で女性が衰えモードで人生の半分を生きることはもったいないことだと思いませんか?

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